名誉会員サーノさんからの戴きモノ。

小料理屋の主人 (BBSより転載)
 

「………………………いらっしゃいませ。」
 それは、一条(仮名)が店内に足を踏み入れ、カウンター席に着いてから3分ほど経った後に耳に届いた言葉だった。
「…あ、はい。」
軽く会釈を返すと、この店の料理人らしきその人物が、鋭い視線を投げつけてきた。
新宿の外れにある小料理店。
ここで、麻薬の取引が行われるとの情報を入手し、調査に来た一条(仮名)だったが、質素ながらも明るい店内の様子に、やはりガセだったらしいと気を緩めかけたところだった。
一条(仮名)も負けずに睨み返す。
他の従業員がいる気配もない。恐らくこの男が一人で店を切り盛りしているのだろう。若いのに、町外れとはいえ東京で店を出せるほどの財力、もしくは才能がある人物なのだろうか。
 見たところ、自分とそう年齢は変わらない。
だがその醸し出す雰囲気は、どこか通常の…堅気の生活を送っている者とは異なっている。
長年(といってもたった4年)務めた、刑事独特の勘で、一条(仮名)はこの店主に疑惑の念を高めた。
 店主は、じっと一条(仮名)を見つめたまま、おしぼりと突き出しをカウンターの上に置いた。
「……………。」
 しばし睨み合う。
この鋭い眼。この百戦錬磨の自分さえ(でもまだ4年生)気圧される迫力。どう見ても、一介の料理人ではない。
この人物なら、麻薬取引を仕切っていても不思議ではない…
 思い切って、何かカマをかけてみようと口を開いたとき。

「ふーッ。暑ちーッ。ひーちゃん、ビールビール!」
 突然店の引き戸が開き、けたたましい声と共に赤い髪がのれんをくぐり入ってきた。
「…ああ。」
一条から眼を離さなかった店主が、ふいにその視線を和らげ、乱入者に大きく頷いてみせる。
「おっと、お客さんか。らっしゃい。」
どう見ても、店員とは思えない…体育会系に属しているだろう肉体に軽そうな髪と頭を乗せた男は、馴れ馴れしげに片手を上げながら、同じくカウンターに陣取った。
「近所の人か? ここの料理はメッチャクチャ美味いぜ、俺が保証するって」
へへへっと笑いかけてくるのに、戸惑いながら曖昧な会釈を返すと、男は店主にもその笑顔を向けた。
「へへへッ。ひーちゃん嬉しそうじゃねェか。久々の一見さんだもんなあ?」
コクコクと頷く顔は、先ほどから変わらず表情が消されているのだが、男の台詞からすると「喜んでいる」のだろうか……。

 小一時間ほど食事をして、店を出る頃には、一条(仮名)の疑惑はきれいさっぱりなくなっていた。
少々無愛想だが、店主のもてなしも気が利いているし、料理も美味かった。
 何より、店主の友人であるらしいあの赤毛の男。
「屈託がない」とは言い難いが、脳天気な笑顔と言動には、よく見知った男のそれと重なるものが多かった。
「…彼のような友人がいるのなら、信じてもいいだろう。」
 俺が保証するぜ、といった時の彼の笑顔を信じよう…。
一条(仮名)は、小さくサムアップしつつ、街灯りに向かって歩き出した──

            終

 なんてえー加減な刑事さんや…(笑)つーかお前、麻薬取引はどうした。長年(4年やて)の刑事の勘はどこに行ったんだ!
というわけで、なんとなく書き殴りましたことお許し下さい。←つい使っちゃう



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